主力銘柄の一つとして弁護士ドットコムを保有しています。
一般的にPERは20倍前後で妥当と説かれることが多いためスクリーニングの時点で候補から除外している方も多くいらっしゃると思います。
まず早速、タイトルの問いに答えるのであれば、個人的には買いだと思っています。
理由は以下の3つです。
・プラットフォーマービジネスはPERで株価の妥当性をはかりづらい
・2つ目の柱、クラウドサイン事業は祖業を超える高いポテンシャル
・自己資本率が高いが、高ROE。キャッシュを稼ぐ力が強いビジネスモデル
まず嚙み砕く前に、弁護士ドットコムの業態について説明します。
弁護士ドットコムの事業モデル
主な業務の柱は3つ
・弁護士支援事業
弁護士自身がお客に売り込むためのマーケティング支援事業です。
みんなの法律相談という一般向けのサイト運営で得たユーザーデータを
マネタイズしたビジネスモデルです。
法律分野というニッチなサイト運営ですが、そこで圧倒的なブランドを
確立しており、この分野での優位性は揺るがないと思います。
そこに法律従事者の急増という外部要因もあるため、当面は緩やかな
成長フェーズを描くとみています。
・クラウドサイン事業
電子契約のプラットフォームを提供しています。契約という紙文化の象徴ともいえる商習慣をIT化して置き換えていっています。印紙税が不要にある、スピーディな取引が出来ることがメリットとなるため、働き方改革やペーパーレスが叫ばれる外部要因も受けて今後も順調に推移するでしょう
なお、この事業の上手いところはネットワークの外部性を最大限享受しているところです。つまり契約という行為は2名以上いるからこそ成り立つものであって、当たり前ですが1名では成り立たないのです。
クラウドサインを使用しているユーザーが、まだ使用していないユーザーにも使用を要請することもケースとして多くあると聞いています。それによって、自己増殖的にユーザーが増え、いわば指数関数的な伸びをみせる可能性があるところです。
また、フリーモデルからの普及拡大フェーズでしたが、順調な推移を踏まえて近年はフリープランの縮小や、1件当たりの課金額の向上など同時にマネタイズ化も進めています。
順調に利益は出せていますが、来期以降は広告宣伝費を大規模に投下することで、経営陣は利益について「意思のある踊り場」を想定しています。来期はそういった意味でも、伸びが加速するかが注目です。
そして、この電子契約市場は2023年に5500億円の市場ということですので、シェア8割を握っている同社のポテンシャルとしてはまだまだ成長が見込めます。皮算用ですが、4000億円近い売上に貢献する事業と言えるわけです。
決算資料にも記載してありますが、来期までのわずか1年でクラウドサイン事業の売上を3倍に増やす計画です。ここまできたら相当、見えてくるステージが変わるでしょうしマーケットからの評価も変わってくると思います。
・税理士ドットコム・新規事業
弁護士ドットコムの税理士版、また企業法務版を展開しています。
このビジネスの上手いところは既に弁護士ドットコムで確立したビジネスモデルの水平展開だということです。非常に再現性が高い形で事業展開ができるので比較的安心したビジネスとして貢献するでしょう。
まだまだ成長フェーズのため、利益貢献はこれからですが、祖業の弁護士ドットコム事業同様、安定したキャッシュカウとなる可能性が高いです。
弁護士ドットコムはニッチトップのプラットフォーマー
以上、事業モデル簡単に解説しましたが、ここまででお分かりの通りいわゆるプラットフォーマーと言われる業態であり、Saas銘柄の典型的な一企業です。
GAFAがマーケットで群を抜けた評価がなされているのもプラットフォーマーとしてのほぼ独占的な地位を確立しているからです。
私見ですが、日本企業がここに伍することは難しいでしょう。ただ「ニッチな分野に特化して、プラットフォームビジネスを展開する」ことでその分野でのニッチトップを目指せる可能性は非常に高いと考えています。
逆を言うと、大量消費からカスタマイズされた消費へ、そしてモノからサービスへの消費形態が大きく変わる中、成功する事業モデルも30年前とは大きく変わっています。
消費者や顧客とサプライヤーの距離を縮めて、正しく結びつける機能を持つ会社こそが時代の要請に即しているとも言えます。
この事業モデルは1位が利益総取りとなるため、圧倒的なポジションを確立することとプラットフォームに属するネットワークをいかに太らせるか、が成功の重要なポイントです。
したがって、初期のフェーズでは利益を丸々投資につぎ込んで利益は十数年後と言ったずっと先に刈りとるモデルが合理性が高いため、PERでははかりづらくなるわけです。
今までなら2〜3年せっせと育てれば4年目以降に実がなるような果樹だったのに対して、すごく肥料はかかるけれどもうまく育てれば半永久的に実がなる果樹というのが現代の事業モデルといったところでしょうか。
現にAmazonという実例があるため、そこをなぞることのできる事業を持つ弁護士ドットコムはある程度将来どうなるかが読みやすいと思っています。
優れたプラットフォーマーかどうかの見極め
ただ、ビジネスモデルはいいけれども実際には途中で頓挫して株券が紙くずとなるような企業は幾つも見てきました。では、どうして弁護士ドットコムが優れたプラットフォーマーと言えるのか。
それが数字にしっかりと表れているから、です。
私が銘柄スクリーニングする際に重視する指標はROE、自己資本比率、キャッシュフローです。
ROEだと15%以上、自己資本比率は6割以上、営業CFがプラスでFCFもプラスかどうかが大まかな基準です。
上記の通り、全て基準を満たしています。
これが意味するところは
効率よく稼いで(高いROE)、でもレバレッジ効果でROEが高いわけでもない(高い自己資本比率)、そして数字のトリックではなくキャッシュを生み出している(営業CF、FCFがプラス)
ということです。
結果として、私が他に保有する銘柄もいわゆるニッチトップのプラットフォーマーが多いですが、だいたい上記の基準を持って確実な根拠を持った銘柄に投資するようにしています。
したがって、PERは重要な指標ではありますが、それに拘泥されるのも良くないと思っています。正解は株価の上昇でしかわかりませんが、今後も弁護士ドットコムは長期保有銘柄として持ち続けようと思います。
今日はこの辺で。